研究課題
本研究は、メタボリックシンドロームあるいは糖尿病の新たな発症要因として、自律神経機能との関わりについて検討した。本年度は自律神経系機能評価の基本的なデータを収集することを目的に、健康ボランティア49人(男性23人、女性26人、平均年齢21.3歳)を対象に当該検査を行い、さらに鏡映描写テストによる急性期のストレス負荷が自律神経系機能に及ぼす影響について検討した。鏡影描写テストは星形の線上を、被験者が鏡を見ながらなぞってくテストであり、描く線が外れるとブザーが鳴るような仕掛けになっている。自律神経系機能評価はTAS-9を2台使用した。本器により、5分間の安静時心拍数の記録から心拍波形の3次微分によりRR間隔を計測し、心拍変動の指標であるSDNN、さらに心拍変動のスペクトラム解析に基づい新低周波領域(LF)、高周波領域(HF)、さらにLF/HFの指標を計測した。安静時の5分間心拍数、SDNN、 LF、 HF、 LF/HFの幾何平均はそれぞれ、398、53,8、595.6、294.7、3.29であった。鏡映描写後の変化について検討したところ、心拍数の有意な増加を認めたが、それ以外の指標の有意な変化は認めなかった。性別、肥満度別、運動習慣別にみても心拍数以外の指標の変化はなかった。安静時では、女性、BMI22未満、運動習慣ありの群ではLF/HFがほぼ1.5であり、交感神経と副交感神経は理想的なバランスを保っていた。一方、男性、BMI22以上、運動習慣なしの群ではやや高い傾向にあり、これら環境要因との関わりが示唆された。急性のストレス負荷に対して、心拍数を除けば大きな変動はなく、平均としてみた場合には安定した指標として把握が可能と考えられた。