研究概要 |
本研究は、抗酸化物質の一つとして分類されている果物類の摂取状況が動脈硬化や高齢化に伴い今後ますます増加すると思われる循環器疾患発症や死亡を抑制しうるかどうかについて検討を行うことを目的としている。既知の研究報告からは、果物類摂取が循環器疾患発症を抑制させることは、欧米を中心としたコホート研究で明らかとなっており、我が国においても同様の報告が散見されている。しかしながら、多量摂取がどのような影響を及ぼすかについては不明である。そこで、本コホート研究では、果物類のうち、特にみかんに焦点を当てて、その後の循環器疾患発症及び死亡との関連の検討を行った。 ベースライン調査前の脳卒中及び急性心筋梗塞発症登録のあった者を除外した計10,090人(平均60.9±12.3歳)(男性3,709人、女性6,381人)について平均7.8年の追跡を実施し、脳卒中225例、心筋梗塞55例の発症、及び635名の死亡を認めた。食頻度調査から最もよく食べる時季の1日あたりの摂取個数に換算した検討では、みかん0個の群と比べ、脳卒中ではみかん2~3個の群のRRが0.277 (0.169-0.455)と最も低く、全死亡ではみかん6~9個の群が0.279(0.166-0.469)と最も低かった。また、脳卒中発症はみかん3個以上、全死亡に関しては9個以上摂取していた場合にはUシェープ状に緩やかな相対危険度の上昇傾向を認めた。この値は、平均的な温州みかん1個あたりの可食分が80gとされていることから240g~720g程度以上に相当し、厚労省食事バランスガイドにおける1日の果物目標2サービング(200g)をみかん単独で超える量に相当する。 現状では果物類のとりすぎの基準に関しては不明な点が多いが、極端な大量摂取は避けた方がよい可能性が示唆され、今後とも追跡調査を継続し、より詳しく検討を行う必要があると考えられた。
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