研究概要 |
血管内皮における内臓脂肪由来活性酸素種の発生様式を検討するために、以下の検討をおこなった。第一、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を、パルミチン酸0-で培養し、細胞内活性酸素種シグナル(ROS)発生の推移をみた。パルミチン酸は、150-200μMを閾値としてROS産生が増加した。これは抗酸化物質N-アセチルシステイン(NAC)により抑制されるが、NAD(P)Hオキシダーゼ阻害薬(diphenylene iodonium ; DPI)やRho-kinase阻害薬では抑制されなかった。第二、パルミチン酸処理後の蛋白発現量の変動を網羅的に解析した(琉球大学医化学講座との共同研究)。パルミチン酸で発現が増強されるSpot70,71,88,89,90が同定された(pH4-7)。spotのひとつは抗酸化分子のひとつでこれまで脂肪酸との関係が指摘されていない。さらに既知あるいは未知の蛋白スポットの発現量変動がみられた。これらのうち蛋白発現量が著明に増加したspotに絞り、siRNA等を用いた遺伝子発現制御により脂肪酸の細胞機能に及ぼす影響を検索している。第三、遺伝子改変および高脂肪食負荷モデルの作成・病態解析、モデル動物およびヒト組織のマイクロRNAおよびプロテオミクス解析を計画・実施中である。第四、インビボモデルにおける血管障害の病態を明らかにするため、以下の検討をおこなった。レプチン受容体変異マウスdb/dbおよびその野生型で、通常食を4週間給餌後、切り出した大動脈リング状標本で血管作動性物質対する反応をみた。通常食ではアセチルコリンおよびニトロプルシッドに対する拡張反応に明らかな変化はみられず、脂肪負荷や体重増加といった追加のストレス因子が必要と想定された。
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