研究課題
京都府南部のある町の唯一の公立小中学校の児童生徒を対象として、2008年5月に質問票による調査と血清検査を行った。当年の当該地域の2〜4月のスギ花粉飛散量はダーラム式補集法により合計2972個とやや多量であった。小中学校在籍者300人のうち242人(80.7%)に血清検査を行ったところ、スギ花粉特異的IgE抗体の分布は陰性が35.1%、CAPスコア1が5.8%、2-3が26.0%、4以上が33.1%であった。ダニ特異的IgE抗体の分布は、陰性が48.7%、CAPスコア1が1.7%、2-3が17.7%、4以上が31.8%であった。このうち当年の症状に関する質問に回答があった224人のうち、スギ花粉抗体が陽性で当年3〜4月にスギ花粉症様症状(くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、鼻がかゆい、目がかゆい、涙が出る、目がごろごろするのいずれか)が出た者(確定者+疑い者)は54.0%であり、症状が3週間以上続いた者(確定者)は25.4%であり、スギ特異的IgE抗体価の分布と有症状者は通常の年よりもやや多かった。また、過去14年間のデータから、スギ花粉およびダニ抗原特異的IgE抗体では、特に1991〜02年出生コホートで、それ以前の出生年コホートより、小学校1年生時以後、加齢に伴ういずれの年齢でも抗体値が高いという出生年コホート効果がみとめられた。スギ花粉特異的IgE抗体値は加齢に伴う増加がみられたが、ダニ抗原特異的IgE抗体値ではみられなかった。スギおよびヒノキ花粉飛散量は1980年代よりも1990年代半ば以降に増加しているが、これらが出生年コホート効果の原因となりうるかの判断はむずかしかった。出生年コホート効果はダニ抗原でもみられるため、この世代での抗原感作の亢進に関する何らかの機序も考える必要がある。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Allergology International 57
ページ: 175-180