研究概要 |
本研究では、介護保険制度における経年的な対象者における要介護状況の変化を除外して、要介護認定基準2009年10月版と,旧版要介護認定基準2006年版との較差を比較するために、介護サービスの標準化と専門性に基づいて、それぞれを同期検証することを研究目的とした。その比較する対象を、同一対象者で同一の時期に、それぞれの要介護認定基準に基づく別途の認定調査員の認定調査結果から要介護認定一次判定を実施した。それぞれの認定調査結果から,要介護認定基準の変更と影響について8施設(400名)と8在宅事業所(208名)の要介護者等の608名を研究対象とし分析した。同期検証した結果、総体的に2009年10月版は、平均合計介護時間はわずか3.37分多めに有意差を持って算出された。要介護度の2006年版から2009年10月版での一致率は、半数近くの調査対象者の要介護度が変化し、軽度化する調査対象者も2割強いた。要介護5の一致率が64.23%と最も高く、要支援1の一致率は29.73%と最も低くなった。要介護5以上に該当する要介護者は2009年10月版の方が2006年版よりも多く分布し、動ける認知症の要介護度はその全体の41.67%が最も軽度化していた。要介護基準等介護時間だけによらない別の指標である介護度の構築が必要である。 介護保険制度のサービスを利用するにあたってはまず被保険者は要介護認定を受けて、要介護認定基準に基づいて要介護度が決定される。介護保険制度の管理運営の根幹である要介護認定基準の変更はすなわち、介護保険料、利用者数、介護給付額に影響を及ぼすことになる。また要介護度は利用者に対する介護報酬と区分支給基準額だけでなく、介護サービスの適用や自己負担にも影響を及ぼす結果となる。介護サービスを受けるには要介護認定を受けることが必要であり、要介護認定は介護サービスを受けるための入り口である。このため、要介護認定の信頼性は、国民の介護保険制度に対する信頼に大きな影響を及ぼす。2009年4月から半年余の間に、2種類の要介護認定システムが同時に採用されている。一連の要介護認定変更の騒動をから、要介護認定システムの変更とその影響は利用者の生活に直接的に影響を与えるものであり、要介護認定基準の介護時間だけによる量的介護評価から質的介護評価を加えた総合介護認定を開発する必要がある。
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