研究概要 |
本研究の目的は平成14年から開始された健診受診者を対象とした前向きコホート研究のデータを用いて、健診所見と生活習慣の医療費予測性について検討することである。本研究ではまず、対象12市町村中、5市町村で医療情報提供に関する覚書を締結した。その後、5市町村において平成18年2月時点で75歳未満の国保加入者4,841人を対象として、平成18年2月から最長54か月間のレセプトデータを収集した。対象者を危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常、現在喫煙、肥満(BMI≧25kg/m^2))の保有数によって、0、1、2、3個以上の4群に分類した。医療費はレセプトデータから対象期間中の総医療費を国保加入期間で除し、1人当たり1か月当たりの総医療費として算出した。危険因子の保有数別に1人当たり1か月当たりの総医療費の平均値を求め、ANOVAを用いて比較した。対象者の平均年齢は60.3歳、男性割合は33.1%、危険因子保有数の内訳は0個:265人(16.5%)、1個:534人(33.3%)、2個:506人(31.5%)、3個以上:299人(18.6%)であった。各群の1人当たり1か月当たりの総医療費の平均は、0個:11,350円、1個:13,118円、2個:15,219円、3個以上:17,572円であり、危険因子0個の者に比べて、2個ならび3個以上の者では医療費が有意に高かった(0個vs.2個:p=0.009,0個vs.3個以上:p<0.001)。危険因子保有者による医療費過剰支出の寄与割合は1個:4.6%、2個:9.5%、3個以上:6.2%であり、危険因子保有者によって総医療費の20.2%が過剰に支払われたことが示唆された。健診所見と生活習慣に基づく本研究の結果は、循環器疾患危険因子が多い者の医療費過剰支出の現状を示すとともに、危険因子保有状況の改善によって医療費がどの程度削減される可能性があるのかを定量的に示した。
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