目的世界各地で多くの市中獲得型MRSAが報告されているが、健康な子供および成人からMRSAおよびメチシリン耐性遺伝子mecAを持つブドウ球菌(MRC-NS)がどの程度分離されるのか、調査を行った。対象都内のK保育園に通う園児91名、医学部学生97名、看護師30名 方法サンプルは、鼻腔から採取し、マンニット食塩培地、およびセフチゾキシム10μg/ml含むマンニット食塩培地に塗布し、48時間培養した。分離された菌種の同定にはスタフィオグラムおよび塩基配列をおこなった。各種薬剤に対する感受性試験は、平板希釈法で行った。メチシリン耐性遺伝子カセットクロモゾーム(SCCmec)のタイプ、PFGE、およびMLST等分子遺伝学的検討を行った。 結果及び考察臨床経験の無い医学部学生からは、MRSA1名(1%)、MRC-NS31名(32%)が保有していた。看護師では、MRSAは分離されなかったが、MRC-NSを保有する人が70%も存在した。いずれもType-IV型のSCCmecを持つ表皮ブドウ球菌が最も多く分離された。9月に行った保育園児の調査では、MSSAは33%、MRSAを保有していた人は一人の1%であり、MRC-NSは48.1%であった。検出されたMRSA株は、コアグラーゼ3型、SCCmecタイプはIV型、毒素産生は無く、MLST解析では、ST88に属していた。このタイプの菌は、2002年に仙台および京都の保育園児から分離されたMRSAと同じであることから、日本特有の市中獲得型MRSAの一っと示唆された。また、1月に調査した結果と比較すると、感受性黄色ブドウ球菌の保有率が上がり、MRC-NSの保有率も上がっていた。また、2回とも調査に参加した58人の鼻腔には、長期間同-のMRC-NSが定着していたというケースは見られなかった。
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