研究課題
過重労働者の疲労を客観的に評価するバイオマーカー候補の1つに酸化ストレスが考えられている。そこで、平成21年度は山口大学医学部野島順三教授の協力を得て、健常者312名の酸化ストレス(d-ROM)を各年代別(20歳代、30歳代、40歳代、50歳代)に調べたところ、d-ROM値は有意に高齢者ほど高く、加齢と酸化ストレスは有意に関連していることが確認された。また、病的な慢性疲労の代表疾患であるCFS患者189名と年齢の一致する健常者312名の酸化ストレス(d-ROM)を比較検討したところ、CFS患者は338.5±85.6 CARR Uと健常者の286.9±50.1 CARR Uと比較して統計学的に有意に高く、病的な慢性疲労と酸化ストレスが関連していることが判明した(p<0.001)。さらに、健常者の疲労と酸化ストレスとの関係を調べる目的にて、2日間健常者12名にコンピュータ化したクレペリン試験を3時間負荷し、その前後でのd-ROM値を調べたところ、健常者においても精神作業付加に伴う疲労によって2日とも酸化ストレスが有意に増加していた(p<0.01)。したがって、d-ROMを用いた酸化ストレスの評価はCFSのような病的な慢性疲労だけでなく、過重労働などの生理的な疲労病態においても関連している可能性が考えられる。また、休憩に伴う酸化ストレスの変化を調べる目的にて、2時間の休息(都市環境下もしくは森林環境下、クロスオーバー法にて実施)を与え前後の変化を調べたところ、都市環境下での休息では酸化ストレスの回復はみられなかったが、森林環境下では有意な回復がみられることが判明、精神作業に伴う疲労の回復には、休息を取る環境整備も重要であることが示された。平成22年度は、企業の疲労検診において、自覚症状調査、自律神経機能評価とともに酸化ストレスについても検討し、過重労働者の疲労を客観的に評価するバイオマーカーの確立を目指す予定である。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (3件)
Life Sciences 86
ページ: 722-725
Clin J Am Soc Nephrology 5
ページ: 659-666
Clinica Chimica Acta 408
ページ: 123-127
Behavioral Medicine 35
ページ: 87-92
Psychiatry Clin Neurosci 63
ページ: 365-373
Nutr Res. 29
ページ: 145-150
Clinica Chimica Acta 403
ページ: 163-166