本研究では、1)従来型の施設を利用した運動介入と、2)自分の周囲(職場)で運動できる環境を整えるという介入について、運動継続効果の分析を行い、環境の違いが運動習慣の獲得・維持にどのように影響するか明らかにするとともに、酸化ストレス及びその防御系への影響の違いも明らかにすることを目的とする。研究初年である平成20年度は、文献検索および学会等で運動指導の方法とその効果に関する情報収集を行うとともに、介入研究として、市中のフィットネスセンターを自主的に利用する群(施設利用群)と、某職域で各職場から数分以内の場所で運動ができるように自転車エルゴメーターを設置して自主的に実践する群(環境整備群)とにおける介入前後の変化比較を行った。 今年度は、これらの対象者の介入前後における酸化ストレス及びその防御系指標の変化を分析した。週90~120分を目標に10~12週間運動を継続してもらい、このうち運動の実施時間が週平均60分以上を達成し、かつデータに欠損等がない対象者(施設利用群:40名中17名、環境整備群:25名中17名)について分析した。その結果、酸化ストレスの指標である尿中8-OHdG及び血中TBARS、血管拡張作用を有するNOの最終代謝物質である血中及び尿中NOx、いずれにおいても、施設群、環境整備群ともに介入前後で有意な変化は認められなかった。昨年の分析結果から、BMIや総コレステロールやLDLコレステロールなどで両群ともに有意な変化が認められたにも関わらず、酸化ストレス及びその防御系には、変化がなかったことは興味深く、このことが明らかになったことは意義深い。次年度には、運動介入1年後のデータを分析することにしているが、他の変化のあった項目との関連性についてや、近年酸化ストレス指標として注目されているチオレドキシンの変化などについても明らかにしていきたい。
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