研究概要 |
本研究では日米の40歳代男性(N=583,Caucasian=296、Japanese=287)の血中ホモシステインと葉酸を同一の検査室で測定し、先行研究で計測された冠動脈石灰化や頸動脈内膜中膜複合体(IMT)との関連を検討した。血漿ホモシステイン値は米国8.4±5.1、日本13.3±6.6(μmol/L)、血清葉酸値は米国21.1±8.7、日本11.8±6.4(nmol/L)でそれぞれ有意差を認めた。ビタミンサプリメント服用者を除くと米国集団の葉酸はやや低下し、ホモシステインもやや上昇したがその値は僅かであった。米国集団では葉酸とホモシステインの間に相関はなく、日本集団では負の関連(r=-0.19)を認めた。冠動脈石灰化(Agatston scoreで10以上)の頻度は、日本で12.2%、米国で26.8%、IMTの厚さはそれぞれ0.619mm、0,671mmと両者とも有意に米国集団で大きかった。日米両集団とも葉酸やホモシステインと潜在性動脈硬化所見(冠動脈石灰化およびIMT)とは関連を認めなかった。結論としてホモシステインはこの年代の日米の潜在性動脈硬化所見の差を説明する要因ではないと考えられた。さらにホモシステインも含めてどのような要因が動脈硬化所見に影響するかIMTを指標に検討した。多変量解析の結果、年齢、米国人であること、収縮期血圧、ウエストサイズ、喫煙、酸化LDLコレステロール(Lectin-like oxidized LDL receptor-1 ligands containing apolipoprotein B)がIMT肥厚と関連していたが、このモデルにおいてもホモシステインはIMTと関連を認めなかった。ホモシステインの代わりに葉酸をモデルに投入しても結果は同様であった。
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