研究概要 |
乳幼児突然死症候群(SIDS)をはじめとする突然死について、(1)カルニチン欠乏による脂質代謝異常(培養細胞を用いた生化学的研究)、(2)乳幼児高体温による暑熱ストレス(モニタリングと聞き取り調査を中心としたフィールドワーク)の二方面から検討を行った。 カルニチン研究に関しては、小腸上皮細胞(Caco2 cell)を単層培養するにとで、カルニチンの分子構造の違いによって生じる吸収機構への影響について検討を行った。さらに、生体内における限られたカルニチン合成の場の一つである脳について。膠芽腫細胞を用いてカルニチンの抗酸化作用について検討した結果、カルニチンの存在下において脳腫瘍細胞の増殖能が抑制されることが明らかになった。 また、乳幼児突然死の発症に関係すると疑われている様々な環境要因の一つである暑熱ストレスについて、基礎データを収集するため、夏季日中の個人別皮膚曝露温度を一定期間モニタリングし、気象庁が発表する日最高気温と実際の曝露温度との差異及び暑熱ストレス耐性の閾値を明らかにすることにより、突然死につながる熱中症の発症リスクとその予防について検討を行った(岡本・上野、第68回日本公衆衛生学会総会,Okamoto M & Ueno Y,Curr study Environ Med Sci2(1), 2009)。 突然死発症のメカニズムについて、様々な観点からより多くの可能性について検討し、基礎的データを収集した本年度の成果は、発症の予防対策に繋がる有意義なものであると考えられる。
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