本年は、以下の研究を、連携研究者らと共に実施した。 DNase Iのエクソン8には、2317番目のアラニン/グアニンの置換によりSNPsが存在し、前者をタイプ1、後者をタイプ2と分類されている。そこで、この塩基置換によりDNase Iの特性が、どのように変化するのかを酵素活性を測定することにより明らかにした。その結果、酵素活性は、タイプ1と比較して、タイプ2が優位に高かったが、酸性に対しては、タイプ2と比較して、タイプ1が安定性であり、また、熱に対してもタイプ2と比較して、タイプ1が安定的であった。これまでの我々の研究から、一般にタイプ1のホモタイプは、アフリカの人種に多く認められ、また、タイプ1とタイプ2とのヘテロタイプは、コーカシアンの人種に多いことが判明しているが、このDNase Iエクソン8のSNPsによって、DNase Iの酵素活性値に差が認められたことから、アポプトーシスが生じる際に、何らか差異が生じ、人種間によって疾患に対する罹患率及び薬剤に対する奏功率等に差が生じているのではないかと推測された。 また、心冠動脈検査が施行された心筋梗塞患者311人に対して、DNase Iのタイプ1及びタイプ2の型判定を行ったところ、タイプ2の組者が優位に認められたことから、タイプ2のSNPsは、急性心筋梗塞を発症する際に関連があると考えられ、さらに、前述のように、タイプ2の型では、DNase Iの酵素活姓が、タイプ1と比較して優位に高かったことから、DNase Iの酵素活性そのものが心筋梗塞発症のメカニズムに重要な役割を演じている可能性が示唆された。 上記の通り、本年では、DNase Iを用いて急性心筋梗塞を診断する方法を確立する研究というよりは、DNase Iの根本的な性格、急性心筋梗塞発症とDNase Iとの関連について、基礎的な側面からの研究を推進した。
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