研究概要 |
主研究者が島根大学から本学に異動し,研究環境が大幅に変わったため,研究をほとんどゼロから立ち上げる必要があった。本年度は,以下の項目に関して実施した。 1.前任の大学では,DNase I mRNAの発現をリアルタイムPCR装置を用いて検出していたが,現在の研究環境では利用できないため,検出感度および簡便性に問題があるが,従来の方法(PCR反応後に電気泳動を行うもの)でのアッセイ系の確立を目指した。しかし,操作が煩雑であり,かつ検出感度に問題があると考えられ,司法・行政解剖症例のように,死後時間が経過した事例での応用には適さないと判断されたことから,本課題の主な目的としては,急性心筋梗塞と診断するに際して,死後時間が経過した症例でも,簡便に診断することを目的としていることから,ほかのバイオ・マーカーの導入を試みた。具体的には,急性冠症候群の発症早期から血中濃度が上昇することが知られているB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)とN末端プロBNP(NT-proBNP)が診断に応用できないかの検討を開始した。 2.DNase Iの血中濃度が,急性心筋梗塞発症後,極めて早期に上昇することはすでに明らかになっていることであるが,簡便な方法での測定方法の開発が重要であることから,連携研究者らはその開発に取り組んだ。具体的には,DNase Iの活性が上昇することにより,DNAが分解される現象を手早く,かつ簡便に検出するため,マイクロチップ電気泳動法を用いて実施した。その結果,10分以内での変化を捉え得ることができたことから,今後,急性心筋梗塞事例への応用が期待される。
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