研究概要 |
生体内に投与されたエタノール(EtOH)は、主に肝臓のAlcohol dehydrogenase(ADH)、CYP2E1、Catalaseで代謝され、アセトアルデヒド(AcH)を産生し、このAcHはAldehyde dehydrogenase(ALDH)によって酢酸へ、次いでTCA cycleにより最終的に水と二酸化炭素に代謝される。また、in vitro実験から、脳ではCatalaseによりEtOHが代謝され、AcHが産生されるとされている。 Wister系ラットにALDHの活性阻害剤cyanamideを前投与した高AcH産生モデルを用い、Catalase活性の阻害剤であるsodi um azide(AZ)or3-amini-1,2,4-triazole(AT)を前投与後にEtOH投与の実験群、ALDH2ノックアウトマウスにEtOH投与の実験群について、血液及び脳微小循環法で採取した透析液のEtOH及びAcH濃度を測定した。 EtOH投与によりCatalase活性阻害剤を前投与した高AcH産生群では脳内AcH濃度は阻害剤ATあるいはAZによる未処置群よりも有意に低濃度であった。脳内のCatalase活性が阻害され、EtOH代謝こ伴うAcH産生の抑制があることを示唆し、脳内でのAcH産生を支持する。なお、脳内のAcH濃度は血液濃度の約1/5であった。EtOHを投与したALDH2ノックアウトマウスでは、血液のみならず、脳内にもAcHが検出されたが、血液濃度の約1/4であった。 両実験群の結果は、血中AcHが高濃度では脳内でもAcHが存在し、血液よりも有意に低濃度で、一部はCatalaseによることを示している。ALDH2活性の一部あるいま全てが不活性なヒトでは、飲酒に伴う中枢神経系への影響こAcHの関与の可能性を支持する基本的データといえる。
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