研究概要 |
我々は,これまでに水中死体の血液を平板培養し溺死した水域(淡水・海水)に特徴的な水棲細菌が検出されることを明らかにした.しかし,生菌を検出するこれまでの我々の方法では高度に腐乱した水中死体に対して利用することができなかった.そこで分子生物学的手法を用いて水棲細菌を検出する方法を開発すれば,高度に腐乱した水中死体においても利用できるのではないかと考えた.昨年度までに得られた研究成果に基づき,指標とする水棲細菌を決定した.即ち,淡水性の細菌の指標としてAeromonas属(A. hydrophila, A. salmonicida),海水性の細菌の指標としてVibrio属(V. fischeri; V. harveyi, V. parahaemolyticus), Photobacterium属(P. damselae, P. phosphoreum, P. leiognathi), Listonella anguillarum及びShewanella algaeの計10種を決定した.各細菌に特異的なPrimer (aerolysin, gyrB, fstl, katA, vhh, toxR, empA, ureC ,luxA, sodB, lysRなどの遺伝子由来)を設計し,4色の蛍光物質を用いて標識した.3130xl Genetic Analyzerで電気泳動後,GeneMapperソフトウェアにより構築した水棲細菌用の自動判定プログラムを用いて解析を行った.その結果,溺死の指標として選定した10種は,いずれも特異的に増幅が認められ,各水棲細菌の判定が可能であった.今後,実際の血液及び臓器試料について分析を行い本法の有効性を検討する.なおこれまでの研究成果を2編の論文にまとめ,国際誌に投稿した.
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