研究概要 |
本研究によって平成20年度及び21年度までに得られた研究成果(Legal Med 2010, 12, 195-199; Forensic Sci Int 2011, 204, 80-87)に基づき,指標とする水棲細菌を決定し,TaqMan-PCR法による簡便かつ迅速な溺死の補助診断法の開発に取り組んだ.淡水性の細菌の指標としてはAeromonas属(A.hydrophila, A.salmonicida),海水性の細菌の指標としてはVibrio属(V.fischeri, V.harveyi, V.parahaemolyticus)及びPhotobacterium属(P.damselae, P.phosphoreum, P.leiognathi)の細菌を選定した.次いで各水棲細菌を特異的に検出可能なPrimerおよびTaqMan-Probeの配列を決定し(標的遺伝子:aerolysin, gyrB, fstA, katA, toxR, vhh, ureC, sodB, luxA),3色の蛍光物質(FAM, NED, Cy5)を用いて標識した.PCR反応は,7500 Real Time PCR Systemを用いて40 cyclesで行い3種類の標的遺伝子を同時に検出可能なTriplex-PCRを3セット作成した(Aeromonas用,Vibrio用,Photobacterium用).基礎実験によって,標準株では特異的検出が可能であることが示されことから,実際の溺死例について血液試料(左心血,右心血,大腿静脈血)及び臓器試料(右肺下葉内部,左肺上葉辺縁部,腎臓,肝臓)の検査を行ったところ,海水溺死5例の100%,淡水溺死8例の88%,河口周辺水域での溺死2例の100%で,それぞれ肺以外のいずれかの試料においても陽性が得られた(肺は全て陽性).今後,さらに検討を重ね,本法の有効性を明らかにする.
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