研究概要 |
計画通りに40年経過したヒト血痕と口腔上皮細胞を採取して試料の収集、DNAの精製、損傷DNAの確認及びこれらの損傷DNAよりSTR多型検出の検討などを行った。 本研究に計画されている法科学試料として2種類があり、採取した口腔上皮細胞をUVランプ(波長254nm)で照射してDNA損傷の状況を対照とした。UVCによるDNAの損傷は短時間で遺伝子の機能障害が見られると報告され、STRに対す影響は現在ではまだはっきりしていない状態である。血痕よるDNAの抽出は上述した試料からそれぞれQIAamp DNA Mini Kitを用いて添付されているマニュアルに従って丁寧にDNAの抽出を行った。ND-1000スペクトロフォトメーターにより抽出されたDNAの濃度を測定し、全ての試料のDNA濃度を100ng/ulまで調節した。1.2%アガロースゲルを作成し、DNAサイズマーカーと一緒に電気泳動して損傷DNAの分子サイズを確認したところ、損傷DNAの電気泳動バンドが薄くなることが確認した。 損傷DNAからAmpFLSTR Identifiler KitによりD8S1179, D21S11, D7S820, CSFIPO, D3S1358, THO1, D13S317, D16S539, D2S1338, D19S433, vWA, TPOX, D18S51, D5S818, FGA)の15ローカス常染色体STR及びX・Y性染色体のAmelogenin型について解析を行い、STR多型を検査したところ、40年経過したヒト血痕ではフラグメントサイズの大きなローカスでは検出しにくくなり、UV照射試料では照射時間が長くなるほど、検出されるSTRローカスの数が減っていく傾向が明らかになった。
|