室温に保存された陳旧のヒト血痕及び人工紫外線照射血痕を用い、DNA損傷について加水分解アルデヒド反応性プローブ(ARP)により、損傷DNAの脱塩基部位を測定した。メトキシアミがAP部位のアルデヒド基とほぼ1:1に反応することでAP部位を安定化するためにこの反応を利用して定量法はマイクロプレートにAP部位を持つDNA(AP-DNA)を固相化し、ARPを反応させた後、アビジン・ビオチン・ペルオキシダーゼ複合体を加えてから酵素基質溶液の吸光度の変化を測定した。標準検量線のもとで各試料のAP sites数を求め、血痕のAP変化とSTR検出について検討を行った。損傷DNAについてAPE1、EndoIII、EndoIV、EndoV、EndoVIII、T4PDG、Fpg、hOGG1、T7EndoIおよびAfu UDGなどを用い、修復を行ったところ、陳旧血痕及び波長312nmの紫外線(エネルギーは870kJ/cm 一定)による照射した血痕においては効果がみられ、3ヶ月で照射した試料から15ローカスSTRの検出ができた。波長254nmの紫外線照射により3ケ月経過した血痕では修復してもSTR型の検出が困難であることが分かった。これはAP部位が多く生じて、修復がきわめて難しいことによると考えられ、幸いに自然光の中に波長254nmの紫外線がほとんど入っていないので、自然界で発見される血痕試料は修復酵素により損傷DNAの修復後にSTR検査が可能で、現在の法医学鑑定の技術では十分にこれらの試料より個人識別ができると考えられる。
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