歯科所見に付随したより多くの遺体の情報を獲得し、迅速な捜査の進展の一助とするために、歯科材料の蛍光反応による製品同定の異同識別システム構築を目的とし、今年度は試料にハイブリッドタイプの硬質レジン(以下、HYB)11製品を加え、さらに蛍光特性の定量化を試みた結果、以下の結論を得た。1.はじめに前年度と同様の実験条件下で、波長可変型光源装置(8波長)により、HYBの蛍光性を調べた。(1)350nm:全製品で蛍光を確認し、4製品では特徴的な色合い(紫~緑)を示した。(2)415・450nm:全製品で蛍光が認められ蛍光強度も異なることから、その違いから製品が識別される可能性を示した。(3)470・490nm:4製品のみで蛍光が観察された。(4)505nm以上:肉眼で蛍光は確認できなかった。2.前年度(金属焼付け用陶材10製品、硬質レジン6製品)の結果と本年度の結果とを統合した。(1)350nmでは全製品が、415nmおよび450nmではHYBや硬質レジンのみが蛍光性を示すことから、金属焼付け用陶材か否かは350nmを含む2波長の蛍光検査のみで判別可能であり、所見採取時に迷いなく正確な所見が得られる点で意義がある。(2)蛍光の色合いや強度の違いから識別可能な製品も僅かに存在するが、主観的な判断に頼らざるを得ない。3.蛍光特性の定量化のため、励起光ならびに蛍光の分光測定を行った。(1)350、415ならびに450nmの励起光の分光特性を測定した結果、いずれも単一ではなく、ある程度の幅を持ったブロードな複数のピーク波長が認められた。(2)励起波長に近く生ずる蛍光をも効率よく把えるには、再度、分光受光部のSCフィルターや励起光のピーク幅を絞るBPBフィルターの選定が必要となった。(3)蛍光特性の分光計測の結果、ピーク特性が異なることが判明した。以上、効率よく真の蛍光を分光測定することで製品識別が可能となることが示唆された。
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