研究概要 |
歯科所見に付随した多くの情報を獲得し迅速な捜査の一助とすることを目的に、ポリライトによる歯冠色歯科材料の蛍光特性を利用した製品識別法を検討した。1.前年度の結果を踏まえ、励起波長付近に生じる蛍光を効率良く把えるために適切なフィルターを験討した。1)励起光のメタルハライドランプには、400~450nmと500~600nmの間に著明なスパイク波形が存在した。2)中心波長415nmの励起による分光スペクトルは、バンド中心が415nmと謳われてはいるものの390~440nmで3個の広いピークが確認された。3)励起波長415nm付近に蛍光ピークが存在する場合、蛍光のみを独立したバンドで把えることが困難となるため、励起波長の全値半幅(FWHM)を狭めるバンドパスフィルター(BPB)を選定した。BP410,BP405,BP400のフィルターを使用し、分光スペクトルを比較した。その結果、BP400は最もFWHMを狭めるのに有効であるものの、同時に光強度をも低下させた。またBP410に比較しBP405がFWHMを狭めたことから、最終的にBP405が合目的的であると判断した。なお、ランプ自体のスパイク波形もフィルターで除去された。2.MB:金属焼付け陶材(10製品)、HYB:ハイブリッド硬質レジン(11製品)およびHR:硬質レジン(7製品)の分光スペクトルによる製品識別を行った。1)MBでは蛍光ピークは検出されなかった。2)HYBでは3製品が製品名まで、他は3製品ごとの3グループまで分光ピークで識別可能であった。3)HRでは蛍光が検出されない1製品と、異なる分光ピークを示す2グループまで識別が可能であった,なお、コンポジットレジンについては現在、同様の実験を継続中である。以上、可視光波長415nmの励起による分光スペクトルのピーク波長を参考に、より客観的な硬質レジン系材料の識別が可能となった。
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