Wild、Adh1-/-、Adh3-/-の各系統マウス(雌雄)にエタノール(EtOH)1、2、3、4または4.5g/kg量を投与し、血中アルコール(Alc)動態と肝ADH活性との関係を検討した。肝ADH活性はWild>Adh3-/-≫Adh1-/-であった。WildはADH1+ADH3、Adh3-/-はADH1、Adh1-/-はADH3の活性を主に反映した。その活性の性差はAdh1-/-では見られず、WildとAdh3-/-で♀>♂であることから、ADH1の性差であることがわかった。BACはAdh1-/-が雌雄とも全投与量で他の2系統より高かった。その性差はWild(全投与量)とAdh3-/-(2〜4g/kg)で♂>♀であった。血中Alc消失速度(β)および体内Alc消失速度(EDR)は雌雄ともAdh1-/-が他の2系統より著しく小さく(1〜4g/kg)、また、Adh3-/-は雄3〜4.5g/kgおよび雌2、3g/kgでWildより小さかった。βおよびEDRの性差は、Adh1-/-では見られないが、Wild(1〜3g/kg)とAdh3-/-(3〜4.5g/kg)で♀>♂であった。従って、BAC、β、EDRの性差は肝ADH1活性の性差が反映したものと考えられた。一方、肝ADH活性の性差がないAdh1-/-のBACと最高血中濃度(Cmax)は、ほぼ全投与量で♀>♂であり、これはAlc分布係数(γ)(1〜3g/kgで♂>♀)の性差が反映したものと考えられた。血中濃度下面積(AUC)は雌雄ともAdh1-/-が他の2系統に比べ著しく大きかったが、Adh3-/-はWildとの差が見られなかった。その性差はWild(1、2g/kg)およびAdh3-/-(3、4/kg)で♂>♀で、βまたはEDRのAUCへの寄与が見られた。以上の結果から、これら各系統マウスの血中Alc動態は基本的には肝ADH活性を反映し、その性差はADH1活性またはγの性差で説明可能であった。しかし、Adh3-/-♂のBAC(1〜3、4.5g/kg)がWildより低いこと、そして、そのγは投与量に依存して増大し、他の2系統より高い(3〜4.5g/kg)ことから、ADH3がEtOHの吸収分布に関係することが示唆された。
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