1.Wild、Adh1-/-、Adh3-/-の各系統雄マウス(n=9~11)にエタノール(EtOH)4.5g/kgを投与し、30分後の血中(心臓血、尾静脈血)、肝、腎、脳、筋の各臓器組織中のEtOHおよびアセトアルデヒド(AcH)濃度を測定した。その結果、肝のAcHはWildに比べAdh1-/-のみならずAdh3-/-も低値を示した。心臓血と腎のAcHはAdh1-/-のみで低値であったが、脳のAcHはAdh3-/-のみで低値であった。EtOHに関しては、血液以外の臓器組織では3系統マウス間で有意な差は見られなかったが、Adh3-/-は尾静脈血で最も低値を、心臓血では逆に最も高値を示した。以上の結果から、EtOH代謝の鍵酵素ADH1は肝のみならず腎においても代謝に寄与しており、これらの臓器ならびに血中のAcH濃度を制御していることが示された。一方、ADH3はADH1と同様肝のEtOH代謝に寄与していることが明らかとなり、さらに、脳においてもこの臓器唯一のADHとして代謝に重要な役割を果たしていることが示唆された。加えて、尾静脈血と心臓血のEtOH濃度から、本ADH3は、そのメカニズムは現在のところ不明であるが、EtOHの体内分布を制御していることが示唆された。現在、EtOH投与後2、4、8の各時間後の各臓器組織のEtOHとAcH濃度を検討中である。 2.マウスの各臓器組織中のADH1およびADH3の酵素量を各特異抗体を用いてELISA法で測定する準備を進めている。予備的に肝の両ADHの酵素量を測定した結果、ADH3は肝1g当たり約0.46mgであり、ADH1(約0.25mg/g肝)の2倍近く存在することがわかった。 3.ADH3の特異的活性であるグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(GSH-dependent FDH)活性を臓器抽出液中で測定する条件を確立した。
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