近年、我々はアルコール脱水素酵素ADH3の体内アルコール(Alc)代謝への寄与を明らかにした。そこで、本ADHの血中Alc動態の性差、主要臓器におけるAlcおよびアセトアルデヒド(AcH)動態、Alc感受性、さらにAlc嗜好性における役割について、ノックアウトマウス(Adh1-/-、Adh3-/-)を用いてAlc代謝の鍵酵素であるADH1と比較検討した。その結果、ADH3のAlc代謝への寄与には性差が見られ、雄ではEtOHの投与量に依存して寄与の増大が見られるが、雌では中等量(2-3g/kg)での寄与が大きかった。一方、Wild、Adh3-/-の両マウス種で見られた血中Alc動態の性差は肝ADH1活性の性差とAlc体内分布率(γ)の性差によってほぼ説明が可能であった。さらに、主要臓器でのAcH産生に関しては、ADH1は肝および腎での寄与が見られたが、ADH3は肝でのみ見られた。また、ADH3はADH1と共に急性Alc中毒防御因子ならびにAlc嗜好因子の役割を果たすことがわかった。
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