研究概要 |
本研究は、MRI装置を用いたin vivo MRS測定にNMRメタボロミクス技術を応用し、死後画像診断時におけるNMRスペクトルデータの活用を実現するための基盤研究である。 平成21年度は、死後早期の摘出ラット骨格筋組織の1H NMRスペクトルデータと死因あるいは死後経過時間との関連づけについて、法医学の専門誌に論文報告することができた(Legal Med,11,S-282-S285(2009))。in vitro実験で良好なデータが得られたことから、本年度は、最終目標である実用可能なin vivo 1H MRSスペクトルデータ取得をめざし、基礎な研究に着手することができた。ラットを用いた急死実験を行い、in vivo測定に必要な動物実験手技の確立と測定条件の設定等を行った。生存時から死後数時間までのスムーズなデータ収集の実現には、さまざまな視点からの基礎的な検討が必要であった。 薬物投与あるいは出血性ショック等による急死実験を動物実験用の高磁場MRI装置内で行うため、あらたに小動物実験に対応可能な高磁場環境対応の高性能非磁性薬液注入装置を開発し、産業財産権の出願(特願2009-143488)した。本開発により、生存状態から死戦期を経て心肺停止確認後死後数時間に至るまで、各種死因による急死モデルの同一個体による連続的な画像およびスペクトルデータの収集が可能となった。 温度マッピングに関する基礎研究も継続し、ラット急死モデルの腹部画像データについて、最終測定時の画像データを基準とすることにより、死後経過時間に伴う死体組織内の温度低下の推移をスムーズに画像化することに成功した。本成果については、研究協力者の栗林がMRIの国際学会にて報告(ISMRM 2010, Stockholm, Sweden, May 2010)する予定である。
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