研究概要 |
昨年度,出血性ショックが重症化するにつれてBUN,クレアチニン濃度の上昇や尿量減少など腎障害が進行することを明らかにした。今年度は,出血させないSham群ならびに全血液量の17.5%,25%および33%をいずれも20分かけて出血させる群の出血1,3,5時間後における腎組織中のTNF-αとIL-1βのmRNA発現および腎静脈血中濃度の測定を行い,出血性ショック時の炎症性サイトカインの発現の程度と腎障害の重症度との関係を検討した。 腎組織中のTNF-αおよびIL-1βのmRNA発現量は,Sham群では変化を認めなかったが,出血群では出血1時間後に有意に増加し,その程度は出血量に応じて高度であった(1時間後のTNF-αmRNA Sham群:0.68±0.07,17.5%:1.25±0.14,25%:2.34±0.27,33%:3.17±0.27;IL-1βmRNA Sham群:0.57±0.09,17.5%:1.81±0.3,25%:2.57±0.33,33%:2.91±0.32)。腎静脈血中サイトカイン濃度も同様であった(1時間後のTNF-α Sham群:17.0±3.1,17.5%:74.5±22.4,25%:154.9±26.2,33%:207.6±17.2pg/ml;IL-1β Sham群:15.9±6.7,17.5%:74.1±33.1,25%:89.9±33.7,33%:104.1±21.2pg/ml)。 これらの結果から,出血性ショック時のTNF-αおよびIL-1βの発現の程度と腎障害の重症度とが関連していることが明らかとなり,炎症性サイトカインの発現により活性化される好中球の出現頻度が出血性ショック時の腎障害の重症度判定および出血性ショックの死因診断に応用できる可能性が示唆された。
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