研究概要 |
過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome : IBS)の病態生理に炎症・免疫異常が何らかの役割を果たしているのではないかと考えちれている。本研究は}食物不耐性がIBSの病態にどのように影響するかを評価し、蛋白分解酵素阻害薬のメシル酸カモスタットのIBSに対する有効性を消化管生理学的観点から検証することである。本年度は、機能性消化管障害患者158例のうち、Rome II診断基準を満たすIBS患者88例(平均年齢40歳、女性46例)を対象とし、質問票によって症状重症度(工BS severity index : IBS-SI)、疾患特異的QOL(IBS-QOL)を評価した。その結果、少なくとも中程度以上「腹部症状のために食事に気をつけなければならない」患者(53例)は、そうでない患者(35例)と比較して腹部膨満感スコア(F=7.65, p<0.01)、日常生活支障スコア(F=8.56, P<0.01)、全体症状スコア(F=6.05, P<0.05)が有意に高く、IBS-QOLスコア(F=41.89, p<0.001)が有意に低かった。これらの所見から、IBS患者の中で食事不耐例の方がそうでない患者よりも腹部膨満感を認めやすく、症状のために生活に支障をきたしやすいことが示された。結論として、IBS患者における食物不耐性に対する治療介入の重要性が示唆された。 一方、インフォームド・コンセントを得た3例のIBS患者に対し、プロトコールに従って14日間のカモスタットあるいはプラセボ服薬前後の直腸知覚閾値測定ならびに直腸平滑筋トーン測定を行った。その結果、脱落・合併症発生例は1例もなく全ての行程を完遂できた。以上より、本研究プロトコールを修正することなく検討を継続できるものと考えられた。
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