研究概要 |
我々はスタチンをマウスに投与し脳内ベータ・アミロイドが低下することおよびその機序を明らかにした(Shinohara, Sato, et al. JBC2010)。スタチンはベータ・アミロイドの産生を抑制し、かつベータ・アミロイドのクリアランスを増大させた。ベータ・アミロイドの産生抑制の機序としてはその前駆体であるAmyloid Precursor Protein-C terminal fragment (APP-CTF)の細胞内輸送を促進して、そのライソゾームでの分解を促進しているように考えられた。培養細胞においても同様の作用が見いだされ、スタチンによるAPP-CTF低下はメバロン酸添加によりキャンセルされたことからスタチンによるタンパクのイソプレニル化抑制作用を介していることが示唆された。また、ベータ・アミロイドは産生とクリアランスのバランスでその脳内レベルが決定されるが、スタチンはベータ・アミロイド・クリアランスをも増加させていた。ベータ・アミロイドのクリアランスの担うとされている分子をスクリーニングしたところ、そのうち、LDL receptor-related protein (LRP)-1の発現をスタチンは増加させていた。細胞レベルでもスタチンはLRP-1の発現を亢進させていた。さらにLRP-1の阻害をRAPやLRP-1抗体を用いて行ったところ、細胞へのベータ・アミロイドの取り込みは抑制された。また、スタチンによるLRP-1の発現亢進はメバロン酸添加によりキャンセルされたことからスタチンによるタンパクのイソプレニル化抑制作用を介していることが示唆された。さらにスタチンの脳内ベータ・アミロイド・ダイナミクスに対する作用を明らかにする為、マイクロダイアリシスの系を確立し(論文投稿中)、検討を行った
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