研究課題
運動症状、睡眠関連症状、うつ症状、幻覚症状、嗅覚障害、自律神経症状などの項目による、パーキンソン病(PD)のスクリーニング用質問紙を作成し、島根県海士町の60歳以上の町民(1129人)に配布した(回収率:86.6%)。同意を得られた住民には神経内科医による診察を行い、PDと、PDの前段階と考えられる軽度パーキンソン徴候(mild Parkinsonian sign : MPS)について調査した。MPSは、Unified PD rating scale(UPDRS)におけるスコアが少なくとも1項目において1点を示すMPS-mと、少なくとも1項目で2点を示すMPS-sについて検討した。また、町内5地域で同意が得られた住民(245名)については質問紙のみならず運動能力評価目的にアクチグラフィー検査を実施し、アクチグラフィーのPD・MPSスクリーニングにおける有用性についても検討した。神経学的診察を行った598名(63.2%)において、PD患者は13例把握され、海士町におけるPD有病率は人口10万人あたり540.8(2009年の全国人口による訂正有病率は277.4)と高率であった。65歳以上の住民におけるPD有病率は1.42%であった。MPS-mは165名で有病率は17.4%、MPS-sは44名で有病率は4.7%と算定された。MPS、特にMPS-sのスクリーニングには、質問紙とアクチグラフィー検査の組み合わせが、最も感度が高かった。来年度は、これらの調査を継続するほか、可能な範囲で画像検査解析も検討に加え、さらに、質問紙についても一般住民・MPS・PDでの比較も含めて詳細に検討すると共に、診断マーカーについての検討も進める。今後、MPS群をフォローアップしてPDなどへの進行の有無とその頻度、さらには、その進行予防などについても検討する必要がある。
すべて 2009
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