運動症状、睡眠関連症状、うつ症状、幻覚症状、嗅覚障害、自律神経症状などの項目匠正る、パーキンソン病(PD)・パーキンソン症候群(PS)のスクリーニング用質問紙を作成し、島根県海士町の60歳以上の町民(1129名)に配布した(回収率:85.7%)。同意を得られた住民には神経内科医による診察を行い、認知症、PD・PS、および、PD・認知症の前段階と考えられる軽度パーキンソン徴候(mild Parkinsonian sign : MPS)について調査した。MPSは、Unified PD rating scale (UPDRS)におけるスコアが少なくとも1項目において1点を示すMPS-mと、少なくとも1項目で2点を示すMPS-sについて検討した。同意が得られた住民(265名)については質問紙のみならず運動能力評価目的にアクチグラフィー検査を実施し、アクチグラフィーのPD・MPSスクリーニングにおける有用性についても検討した。 神経学的診察を行った804名(71.2%)においてPD患者は14例把握され、海士町におけるPD有病率は人口10万人あたり582.8と高率であり、65歳以上の住民におけるPD有病率は1.5%であった。なお、14例のうち3例は未受診で、今回の調査により診断された。 MPSは178名(有病率23.7%)、MPS-mは128名で有病率は15.9%、MPS-sは50名で有病率は6.2%と算定された。MPS、特にMPS-sのスクリーニングには、質問紙とアクチグラフィー検査の組み合わせが、最も感度が高かった。また、PSは69名おり、内訳としては脳血管障害によるものが最多であった。 さらに、MRI脳画像検査も合わせて解析中であり、今後は、血液診断マーカー、MPS群をフォローアップしてPD・PSや認知症などへの進行の観察とその進行予防などについて検討する必要がある。
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