【研究目的】 長期間の紫外線(UV)暴露は、皮膚の老化と共に皮膚がんの発生に関係していることはよく指摘されている。本研究は、伝統的に皮膚障害に使用されている天然薬物から、紫外線照射による皮膚がんの発生を阻止する化合物を探索し、その作用機構を明らかにする。 【研究実績の概要】 平成22年度は、2種類の生薬抽出エキスやScutellaria baicalensis黄岑から単離したフラボノイド類のUVB波照射による皮膚障害に及ぼす影響を以下の項目で検討した。 (1)皮膚の肥厚・弾力性(2)しわの形成、色素沈着(3)皮膚病理標本からの表皮層や真皮層への影響(4)皮膚病理の免疫染色によるDNA損傷、アポトーシスの発現(5)皮膚組織中のVEGF、MMP類の発現(6)皮膚腫瘍の発生および増殖能を検討した。 その結果 1)短期のUVB照射下で、オリーブ葉(300および1000mg/kg)エキスおよび主成分Oleuropein(85mg/kg)は皮膚肥厚の増加、弾力性の低下を防止し、その作用機構は、UVB照射による表皮層、真皮層の増殖阻止、DNA損傷阻止、およびMMP-13発現の阻害によることを明らかにした。 2)長期のUVB照射下で、松樹皮成分Flavangenol(200および600mg/kg)は、皮膚肥厚、弾力性の低下、しわ形成、色素沈着および皮膚腫瘍の発生を抑制し、その作用機構は、UVB照射によるDNA損傷およびVEGF産生阻害によることを明らかにした。 3)短期のUVB照射における黄苓中のBaicalein(10、50mg/kg)およびWogonin(10、50mg/kg)は皮膚炎症を抑制し、その作用は、COX-2、NF-κB、MMP-2、MMP-9発現およびVEGF産生の阻害作用を介していることを明らかにした。
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