研究概要 |
ストレスによる交感神経-副腎髄質(S-A)系の過剰な反応は高血圧症、消化性潰瘍、免疫能低下による発癌等を引き起こすことから、この系の脳内賦活機序を明らかにすることはそれら疾病の発症予防と治療に役立つと考えられる。 既に私たちは、ラット脳室内に微量投与したcorticotropin-releasing factor(CRF)によるS-A系の賦活に、脳内ホスホリパーゼC(PLC)/ジアシルグリセロール(DAG)リパーゼ系を介したアラキドン酸(AA)カスケード系賦活が関与することを報告している(Yokotani et al., 2001 ; Shimizu et al., 2008)。そこで今回、このS-A系賦活をモノアシルグリセロール(MAG)との関連で解析した[MAGは別名2-アラキドニルグリセロール(2-AG)で、今日エンドカンナビノイド(eCB)として注目されている]。(1)CRFによる血中カテコールアミン(CA)増加は、MAGリパーゼ遮断薬(MAFP)の脳室内前処置により抑制された。(2)CRFの反応は、CB1受容体遮断薬(AM251)により増強した。(3)CRFの反応は、CB1受容体刺激薬(ACEA)により抑制された。(4)CRFの反応は、CB取り込み阻害薬(AM404)により抑制された。(5)2-AGの脳室内投与は血中CAを増加し、この増加はシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬(インドメタシン)により抑制された。 これらの成績から脳内2-AGの2方向性の役割が明らかになった。(1)2-AGはAAカスケード系の前駆物質として、CRFによる中枢性S-A系賦活に関与する。一方、(2)2-AGはeCBとして、逆行性に上位の賦活経路にCB1受容体を介して抑制性に関与する。これらの成績から、ストレス関連疾病へのCB1受容体刺激薬およびCB取り込み阻害薬の有用性が示唆される。
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