研究課題/領域番号 |
20590703
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前田 豊樹 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (30264112)
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研究分担者 |
牧野 直樹 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (60157170)
樋口 義洋 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (40404032)
尾山 純一 九州大学, 大学病院, 助教 (30359939)
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キーワード | テロメア / サブテロメア / DNAメチル化 / 老化 |
研究概要 |
本研究では疾病の老化への影響を、末梢白血球のテロメアDNA長関連の変化として定量し、病状を老化の促進の尺度で捉え、その変化の治療効果判定への応用を目的として、種々の病態とテロメア関連パラメータとの相関を検討した。研究最終年度となる平成22年度は、疾病そのものよりも臨床検査値や患者の身体能力とテロメア長関連パラメータとの相関を検証した。これは日常診療の中で、ゲノムレベルでの老化を臨床検査値などから逆に推定することにつながる。まず、外来生活習慣病患者では、男性でクレアチニンとビリルビン値が、女性でヘモグロビンとアルブミン/グロブリン比が、また脳卒中男性入院患者では腎機能が、それぞれテロメア長との有意な相関関係を示した。また療養病棟入院中の女性患者では、身体能力とテロメア長が逆相関し、さらにリハビリテーションによる身体回復効果とテロメア周辺のメチル化の程度が正相関することを報告した。これらは、性別等の条件によって主たる老化指標がかわることを示す一方、ゲノム老化性変化を臨床現場で数値化して捉えうることも同時に示している。そして、リハビリによる回復などの治療効果推定指標にも用いられる可能性を示すことができた。これと並行して行った培養実験では、昨年度も報告したように、個体レベルの老化と人為的な細胞レベルの老化とではテロメア変化の様相が異なるため平行に論じることはできないが、放射線や過酸化化合物添加などの有害作用に対して、それに「抵抗」する変化と「障害」された変化が混在する結果となった。興味深いことに、軽微な程度の有害作用に対しては、テロメアラーゼ活性が高まり、テロメアが伸長する傾向が見られるといった従来とは逆の結果を確認した。これは、細胞に対して持続する軽微な有害作用によってむしろその老化性変化が抑制されるという、いわゆるホルミシス効果を支持する所見と考えられた。
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