研究概要 |
現在、抗インフルエンザ薬としてオセルタミビルが広く用いられているが、最近のオセルタミビル耐性ウイルスの出現などにより、抗インフルエンザ薬の選択肢を広げることが求められている。また、高病原性鳥インフルエンザウイルスのヒトでの大規模な流行が危惧されていることから、その対策は急務の課題である。麻黄湯は、経験的に臨床でインフルエンザに対する有効性が報告されているが、その有効性の科学的評価はなされていない。そこでインフルエンザに対する麻黄湯の薬効について、in vivoの評価系を用いて検討した。 種々の系統のマウスを用いてインフルエンザウイルス感染に対する発熱作用について検討したところ、最も高い応答性がA/Jマウスに認められた。そこでA/Jマウス(♀、8週齢)にインフルエンザウイルスA/PR/8/34(H1N1,20×LD_<50>)を両側鼻腔に1μlずつ接種した。感染後4時間から52時間まで、麻黄湯の煎液または水を給水瓶から自由摂取させ、直腸体温を測定した。インフルエンザウイルス価は、プラーク形成法により測定した。 その結果、水投与群と比較して麻黄湯投与群で有意な解熱作用が見られ、インフルエンザウイルス感染2日後の気道でのウイルス価の有意な低下が認められた。また麻黄湯には血清の抗ウイルスIgG_1抗体価、肺洗液の抗ウイルスIgA抗体価、鼻腔洗液の抗ウイルスIgM抗体価を有意に上昇させる作用が認められた。 今年度の成果により、麻黄湯はインフルエンザウイルス感染したマウスに対して感染早期に解熱作用を示し、気道のウイルス価を低下させる作用を有することが明らかになった。また、麻黄湯はウイルス特異的な抗体を上昇させることにより、インフルエンザウイルス感染に対する効果を発現することが示唆された。
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