研究概要 |
高齢者人口、特に85歳以上の超高齢者人口が急増している日本において、健康長寿の達成は個人的にも社会的にも強く望まれている。健康長寿を考える上で、高齢者自身の主観的QOL (以下QOL)が高く維持されることは極めて重要である。高齢者のQOLには、身体・認知機能、心理的側面、性格、健康状態などさまざまな要素が関連している。そこで超高齢者を対象に身体機能、精神機能、心理的側面、医学的健康度、生活環境、社会生活などを多方面から包括的に調査し、QOLに関連する要因を検討した。東京都新宿区と港区在住の85歳以上高齢者179人(男性74人、女性105人、平均年齢88.4歳)を住民台帳から無作為に抽出し、 QOL (WHOQOL-OLD)、身体機能(ADL、 IADL)、認知機能(MMSE)、性格5因子(NEO-FFI:神経症傾向、外向性、開放性、調和性、誠実性)、精神的健康度(WHO5)、モラーレ(PGC)、医学的健康度(診察、血液検査、栄養状態、病歴など)を調査した。 QOLは、平均3.4±0.5点であった。 QOLとその他の変数をSpearmanの相関係数で検討した。 MMSEと病歴は有意な相関は示さなかった。性別(男性0、女性1)、神経症傾向、WHO5で負相関(それぞれr=-.221,-.459,-.475,p<0.05)、BADL、 IADL、外向性、開放性、調和姓、誠実性、PGCと正相関(それぞれr=.246,.220,.471,.283,.283,338,.398,p<0.05)であった。QOLを従属変数とした多変量解析では、 IADLと外向性が有意な正の寄与因子として、 WHO5と性別(男性0、女性1)が有意な負の寄与因子として抽出された(R2=0.617、p<0.01、 IADL;β=0.398、p=0.005、外向性;β=0.322、 p=0.004、 WHO5;β=-0.338、 p=0.005、性別;β=-0.0213、 p=0.036)。超高齢者では男性でQOLが高いこと、また、自立していて、社交性があり、楽観的で鬱になりにくい人はQOLが高いことが示された。超高齢者の自立を妨げる要因(虚弱や骨格筋減弱症)のメカニズム解明、老人性うつの予防が超高齢者のQOL向上に役立つ可能性がある。
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