研究概要 |
日本は長寿社会になり、「健康長寿」への関心が高まっている。急速に増加すること次が見込まれている85歳以上の高齢者(超高齢者)の暮らしぶりや健康状態、精神心理的側面などを包括的に調査し、健康長寿の資する要因を探ることが本研究の目的である。本研究では、平成20年度より東京都新宿区と港区在住の超高齢者を住民台帳から無作為に抽出し、85歳コホートの確立を開始した。平成21年度は新たに渋谷区を加えて研究協力者を募った結果、363名の方の協力を得た。平成21年度は,新規の研究協力者を対象に,アンケート調査(食事調査、主観的QOL、パーソナリティ、抑うつ尺度)と健康調査(身体計側、内料・歯科診察、病歴、体力測定、心電図、血液・尿検査、頚動脈エコー、骨密度など)を行った。以下に、解析結果の中間報告を示す。超高齢者の自立を脅かす主な原因である「虚弱」に注目し、虚弱と主観的QOL、栄養状態、骨密度、日常生活活動度、社会活動などとの関係を検討した。虚弱の定義は、FriedらのCHS indexを用いた。すなわち、(1)意図しない3kg以上の体重減少、(2)握力低下、(3)歩行速度低下、(4)意欲の低下、(5)身体活動の低下の5項目を得点化し、虚弱度を「no frail」「pre frail」「frail」に分類した。3群間で主観的QOL、栄養指標(アルブミン、コレステロール、血色素量,CRP)、骨密皮、骨代謝指標(カルシワム、ビタミンD、PTH-intact)、日常生活活動度、主観的健康感、抑うつ尺度(GDS)、ソーシャルネットワークを比較した。結果、虚弱皮が高くなるほど主観的QOLは有意に低下した。栄養指標ではコレステロールが有意に低下しCRPが有意に上昇した。骨密度は有意に低下、骨代謝指標ではPTH-intactが有意に上昇した。日常生活活動度、主観的健康感はいずれも虚弱度が高いほど有意に低下、GDSは有意に上昇した。友達づきあいや社会参加などのソーシャルネットワークは有意に縮小した。虚弱は、栄養、骨密度、日常生活活動度のような身体的側面のみならず、主観的QOL、健康感、抑うつ、ソーシャルネットワークといった心理社会的側面にも関連していることが示された。超高齢期のwell-beingを高めるには虚弱予防が極めて重要と考えられる。
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