本研究においては、細胞膜の物理的性質の検討として、電子スピン共鳴ならびにスピンラベル法を用いて高血圧患者の細胞膜流動性(fluidity)を測定し、その調節を各種血管内分泌因子との関連から考察を加えた。高血圧患者の赤血球膜fluidityは正常血圧者に比し有意に減少し、高血圧における微小循環障害が示唆された。また、Nitric oxide (NO)は本態性高血圧患者の赤血球膜fluidityを上昇(microviscosityを改善)させた。一方、炎症の指標である血中high-sensitivity C-reactive protein(hs-CRP)は高血圧群で正常血圧者に比し高値であり、さらに赤血球膜fluidityや血中NO代謝産物の低下と有意に相関することから、炎症反応の亢進が高血圧の膜機能ならびに微小循環調節に重要な役割を果たすと考えられた。
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