本研究においては、細胞膜の物理的性質の検討として、電子スピン共鳴ならびにスピンラベル法を用いて高血圧患者の細胞膜fluidityを測定し、その調節機序を各種血管内分泌因子との関連から考察した。高血圧患者の赤血球膜fluidityは正常血圧者に比し有意に低下していた。次にselective estrogen receptor modulator (SERM)、tamoxifenの赤血球膜fluidityに対する影響を検討した。Tamoxifenはin vitroで濃度依存性に膜fluidityを改善させた。また、その作用は一部NOを介することが明らかとなった。さらに、膜fluidity改善作用は閉経後高血圧女性群で閉経後正常血圧女性群に比し有意に大であった。これらの成績はtamoxifenが膜microviscosityの悪化を防ぐひとつのdefense mechanismとして作用し、高血圧の細胞膜機能を改善し得る可能性を示唆するものと考えられた。
|