研究概要 |
平成20年度の研究では、臨床上、問題になる慢性的な心理社会的ストレス状況下で37-38℃の微熱が持続する「慢性ストレス性高体温症」の機序を解明するため、「慢性ストレス性高体温症モデルラット」を作成することを目標とした。そのため雄Wistarラットを用いて、以下のストレスを慢性的に負荷し、体温の変化を観察した。(1)反復拘束ストレス:まず1時間の拘束ストレスを毎目、4遍間加える実験を行った.その結果,ストレス負荷開始から1週間後までは,ストレス負荷時にコントロールと比べ体温が平均1.5℃以上上昇していたが,その後体温上昇は徐々に認められなくなり,4週間のストレス負荷終了後1週間後(=後ストレス期)でも体温上昇は認められなかった.さらに(2)コミュニケーションストレス(コミュニケーションボックスを用いた反復心理的ストレス)、(3)反復水回避ストレス、(4)慢性混合ストレス(複数のストレスをランダムに加える)、などのストレスを毎日、4週間加えることも試みたが、いずれも同様に慢性的な体温上昇は生じなかった。(5)そこで次に、社会的敗北ストレス(飼育しているラットと同じケージの中に、より大きくて凶暴なラットを1匹、1日のうち一定時間入れるというストレス)を4週間加えたところ、ストレス負荷開始から4週間後までの毎日、ストレス負荷時に平均1.0℃の体温上昇が認められ、またストレス負荷の終了した後でも、ストレス負荷していた時間帯とそれに引き続いた6時間ほどの時間帯で、コントロールラットに比べ、0.5-1.0℃程度の体温上昇が認められた。したがって慢性的な社会的敗北ストレスによって慢性ストレス性高体温モデルが完成したと判断した。
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