平成21年度は、雄Wistarラットに午前10-12時の間に、繰り返し社会的敗北ストレス(約400gの雄Long Evansラットのケージの中に約200gの雄Wistarラットを入れ、攻撃を受けたところで、2匹を金網で仕切り、そのまま1時間、同じケージの中で飼う)を4期(1期はストレスを7日連続して加えて1日休む。)加えたときの体温、行動量の変化を、テレメトリーシステムを用いて測定し、コントロールラット(空のケージに1時間移動させた後、ホームケージに戻す)と比較した。またストレス負荷後の変化を観察するために、4期終了後、さらに1週間、体温と行動量を観察した。 その結果、単回の社会的敗北ストレスでは、ストレス負荷時に約1.5℃体温が上昇したが、ストレス負荷後、徐々にコントロールレベルまで低下し、暗期の体温はコントロールラットの体温と差はなかった。第1期から第3期では、ストレス群の体温は明期のみでコントロール群より高い体温を示し、暗期の体温はコントロール群と差がなかった。ストレスを負荷しない日の体温でも同様の結果であった。しかしながら第4期になると、ストレス群の体温は、明期、暗期ともにコントロール群より0.2-0.3℃高く、この高体温状態はストレス負荷終了後も1週間続いた。なお1期から4期、いずれにおいても、一日の行動量は両群間で差がなかった。 この繰り返し社会的敗北ストレスモデルは、慢性ストレス状態で微熱程度の高体温を呈する患者の病態を理解する上で有用なモデルと考えられる。
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