平成22年度は、雄Wistarラットに午前10-12時の間に、繰り返し社会的敗北ストレス(約400gの雄Long Evansラットのケージの中に約200gの雄Wistarラットを入れ、攻撃を受けたところで、2匹を金網で仕切り、そのまま1時間、同じケージの中で飼う)を4期(1期はストレスを7日連続して加えて1日休む)加えたとき(さらに5期として、4期終了8日後)の不安、抑うつに関連した行動の変化を観察した。そしてテレメトリーシステムを用いて測定した体温の変化との関連性を検討した。不安行動は高架式十字迷路法を用いて、ラットが5分間でオープンアームに侵入した回数、およびオープンアームでの滞在時間を測定した。抑うつは強制水泳試験での不動時間を指標とした。その結果、高架式十字迷路試験では、いずれの指標も、第1期から第5期の全ての期間で、ストレス群と非ストレス群の間で差がみられなかった。強制水泳試験では、第1期から第3期においては、ストレス群と非ストレス群の間で不動時間に差はみられなかったが、第4期と第5期では、ストレス群の不動時間は非ストレス群より有意に延長した。繰り返し社会的敗北ストレスを受けたラットの体温は、第1期から第3期では、ストレス群の体温は明期ではコントロール群より高い値を示したが、暗期ではコントロール群と差がなかった。しかしながら第4期と第5期では、ストレス群の体温は、明期、暗期ともに非ストレス群より0.2-0.3℃高い状態を示した。つまり繰り返し社会的敗北ストレスによってラットが慢性微熱(高体温)を呈するようになる時期は、抑うつ状態を呈する時期に一致した。このことから、ストレス性慢性高体温症と抑うつ状態との間には共通の脳内機序が存在すると考えられる。
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