研究課題/領域番号 |
20590713
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
権藤 元治 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所・心身医学研究部, 協力研究員 (20448418)
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研究分担者 |
小牧 元 国立精神・神経センター, 精神保健研究所・心身医学研究部, 部長 (70225564)
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キーワード | 心身症 / 身体症状愁訴 / 扁桃体 / 腹側外側前頭前野 / 機能的MRI / 脳機能画像 / 皮膚電気抵抗 / 痛み |
研究概要 |
不安によって痛みが増幅する際の脳の反応と日常の身体症状愁訴の関係について研究した。健康な被験者18名をSymptom Checklist-90-Revised(SCL-90-R)の身体化の指標によって比較的日常の身体症状が多い群(High somatization : HS)9名と少ない群(Low somatization : LS)9名に分けた。数種類の図形を見た後に図形と対応した強さの電気刺激を右足に与えて条件付けしたあと、f MRIによって脳血流の反応を測定しながら、同様の実験をおこなった。不安を喚起する図形を見た際、普段から身体症状が多い群の方が情動の中枢である扁桃体の賦活が大きいことがわかった。また、電流の強さは同じでもより大きな不安を伴った電気刺激を与えた際に、HLよりHSの方が痛みの評価に関わるとされている腹側外側前頭前野の反応が大きかった。このことは不安を伴う痛み刺激の際の脳の反応には個人差があり、普段から身体症状を強く訴える人は情動や痛みの評価に関わる脳の部位がより活発に反応することを示した。 また、痛みストレスを評価する脳の反応にどのような個人差があるかということについて予備的な研究を行った。健康な被験者4名に対してf MRIと皮膚の電気抵抗(Galvanic Skin Resistance : GSR)を測定しながら、様々な強さの電気刺激を右足に与えて、各々の痛み刺激の不快感をVisual Analog Scale(VAS)にて評価させた。VASの値を従属変数、GSRの振幅を独立変数とした線形回帰式の決定係数を算出した。その結果、被験者のうち1名は他の3名と比較して回帰式の精度が低かった。その1名は腹側外側前頭前野において他の3名よりも脳活動が低下している領域が存在した。このような脳活動の違いは、急性のストレスの認知または評価に関連し、ストレスコーピングに影響を与えているか可能性がある。今後、被験者数を増やし、詳細に検討することにより、ストレス認知に関わる脳の部位の活動性の個人差とストレスに対する行動様式の関係の解明につながる可能性が示唆された。
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