研究課題/領域番号 |
20590713
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
権藤 元治 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所・心身医学研究部, 協力研究員 (20448418)
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研究分担者 |
守口 善也 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所・精神生理研究部, 室長 (40392477)
小牧 元 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所・心身医学研究部, 部長 (70225564)
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キーワード | 心身症 / 脳機能画像 / 海馬 / ストレス / 疼痛 / 身体愁訴 / 下前頭回 / 中前頭回 |
研究概要 |
身体症状の発症・増悪に心理社会的要因が関与する「心身症」とよばれる病態では、一般的な内科的治療で改善せず慢性化するものが多い。こうした病態が存在するとき、身体-脳の相互連関において、情動の処理不全を起こしやすい神経素因があり、心身の緊張状態が持続し身体症状に至る機序が考えられる。 海馬は慢性ストレスに対する脆弱性があることがわかっている。一方で脳機能画像研究では、急性ストレスとして痛み刺激を用いた際の不安による痛みの増幅に海馬が重要な役割を果たしていることが報告されている。しかし、この不安によって急性の侵害刺激が増幅するメカニズムが日常の身体愁訴に与える影響については調べられていない。 我々は不安による痛み修飾における海馬の機能と日常の身体愁訴との関係について、機能的MRIを用いて調査した。 18人の健常人に最近一週間の身体愁訴の程度について質問紙を用いて調べた。そして機能的MRIによって弱い不安のキューとそれに続く痛み、強い不安のキューとそれに続く痛みに対する脳血流反応を分析した。不安のキューの強弱に海馬が反応しており、その海馬の反応は日常の身体愁訴の程度と負の相関をしていた。このことから、海馬の機能不全が日常の身体愁訴の発現に関係していることが示唆された。また、キューを見たときの海馬の反応と痛みを受けた時の下前頭回、中前頭回、海馬の反応に関連がみられ、弱い不安を伴う痛み条件の際のこれらの領域の反応が、日常の身体愁訴の程度と正の相関をしていることがわかった。このことから、これらの部位の活動が弱い不安のもとで抑制されないことが日常の身体愁訴の発現に関係していることが分かった。 日常の身体愁訴の発現は不安条件を区別する際の海馬の機能不全と関係しており、海馬とそれに関連した脳皮質の反応が弱い不安に対して抑制されないことが、日常の身体愁訴の増悪に影響している恐れがある。
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