本研究の目的はヘム・ポルフィリンの前駆体であるアミノレブリン酸を投与して、尿中ポルフィリン排泄が担癌患者に特異的に認められるか否かを判定し、その現象を用いて担癌状態にあるか否かをスクリーニングしうるかどうかを明らかにすることにある。平成20~21年度を受けて22年度は引き続き担癌患者に対して十分な説明ののち、いつでも同意を撤回できることを周知したうえで了解を得られた胃癌3症例と胃腺腫2症例につき検討を加えた。夜間絶食ののち、アミノレブリン酸服用後4時間後に蛍光内視鏡装置を用いた上部消化管内視鏡検査を施行した結果、2症例で、がん領域に特異的に分布するポルフィリン由来の固有蛍光を認めたが、1例では萎縮像を呈示する胃体部全体に蛍光が認められた。がん特異的蛍光の機序として(1)がん特異的なアミノレブリン酸輸送系の亢進、(2)がん特異的アミノレブリン酸→ヘムへの代謝の相違が示唆されている状況にあるが、アミノレブリン酸由来蛍光にピロリ菌によってもたらされる慢性炎症や腸上皮化成も関与している可能性が示唆された。がんの組織型は3例とも高分化腺癌であった。腺腫症例においては蛍光を認めなかった。尿検体においては、正常ボランティア・腺腫症例と比較すると、これら正常・良性腫瘍の患者の尿中にはほとんど認められないウロポルフィリン、コプロポルフィリンが高値をとる傾向を認めたが、統計学的な検討を加えるとがんvs正常・良性腫瘍間に有意差はなかった。統計学的有意差が得られなかった理由として、それがサンプル数によるものかどうかは、今後引き続き検討を加える必要がある。
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