パレット食道およびパレット食道癌発生におけるNotchシグナルの関連についてはこれまで明らかとなってない。そこで、食道扁平上皮の恒常性維持におけるNotchシグナルの機能解析を行うとともに、パレット食道及びパレット食道を発生母地とした腺癌の発症機構におけるNotchシグナルの関与の詳細を解明することを目的とし、今年度は以下の研究実績を得た。 1. パレット食道癌細胞株におけるNotchシグナル発現状況の解析 ヒト食道腺癌細胞株(OE33)におけるNotch関連遺伝子の発現をmRNAレベル(定量PCR)及び蛋白レベル(Western blot)にて検討し、扁平上皮細胞株(Het-1A)との比較を行った。OE33ではHet-1Aに比較してNotch-1の発現亢進が認められた。続いて、同細胞株を用いて胃酸・胆汁酸刺激によるNotchシグナルの発現変化を検討したところ、胆汁酸刺激によってNotchの下流シグナルであるHes-1の発現が抑制され、Hathlの発現の有意な増強を認めた。 2. NotchシグナルとCdx2のクロストークに関する検討 パレット食道の形成に重要な役割を果たしているCdx2の発現とNotchシグナルの関連について評価した。まず、OE33にγ-セクレターゼ阻害剤を加え、Ngtchシグナルを抑制することでCdx2の発現に変化が生じるか否かを検討した。γ-セクレターゼ阻害薬投与を行うと、Hes-1の発現低下に伴ってCdx2の発現の有意な亢進が認められた。続いて胆汁酸刺激による発現を検討したところ、刺激によってHes-1の抑制、Hath-1の発現が増強し、それに伴いCdx2の発現の亢進も認められた。したがって、NotchシグナルはCdx2の発現調節に影響を与えていることが示され、これらシグナルに胆汁酸が深く関与していることが示唆された。
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