研究概要 |
【目的】モチリン(Mot)およびエリスロマイシン(EM)はモチリン受容体に結合し,またグレリンはGHS受容体に結合し,消化管運動機能調節に重要な役割を果たしている。今年度,ヒトモチリン受容体トランスジェニック(TG)マウス(本マウスはnaturalにGHS受容体を発現している)を用い,MotやEM刺激時の消化管運動の解析,代謝への影響,組織の変化,グレリン動態の解析を行った。【方法】(1)TGマウスをEM非投与群とEM20mg/日2週間投与群に分け,代謝ケージを用いて,体重増加,食餌摂取量,飲水量,便量,尿量,活動量を解析した。(2)TGマウスあるいは野生型マウスにEM 10mg/匹あるいはMot 20ng/匹を静脈内投与し,消化管運動の変化を解析した。(3)TGマウスのEM非投与群と投与群の消化管,肝,膵,脾,精巣上体脂肪量の重量測定および組織学的変化を解析した。【結果】(1)TGマウスのEM投与群は非投与群に比して,食餌摂取量,飲水量,便量は増加し,また活動量も増加したが,体重増加は少なかった。(2)TGマウスのEM静脈内投与群,Mot静脈内投与群ともに,野生型マウスと比較して消化管運動は亢進した。(3)TGマウスのEM投与群の消化管,肝,膵,脾,精巣上体の重量は非投与群に比して差は見られず,組織学的にも差は見られなかった。【結論】モチリン受容体トランスジェニックマウスを用いた慢性的な受容体刺激においては,代謝状態には影響が少ないことが明らかとなった。血中グレリン分泌動態の解析が今後必要である。
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