研究概要 |
中枢神経系と消化管は生体の代謝調節に重要な臓器である.両者の関連については,消化管運動,内分泌機能,外分泌機能であり,消化吸収に最も重要な小腸の機能との関連に焦点をあてた研究は少なかった.今回は小腸粘膜の形態に及ぼす視床下部諸核を中心とする中枢神経系の関与を明らかにし、さらに小腸粘膜の増殖機構やアポトーシス実行機序に焦点をあてた.アポトーシスや増殖の発現や生理的意義に注目して研究をすすめているグループは少ないのが現状である.代謝調節において重要な臓器である小腸の増殖機構やアポトーシスの中枢神経調節機構の解明で小腸の機能だけでなく生体全体の代謝調節の解明に重要である可能性がある.視床下部の諸核は食欲の調節だけでなく体温・飲水等の多くの機能を通じて代謝調節に関与している.視床下部を中心とする中枢神経系が小腸の生理機能の恒常性維持への関与を詳しく検討した今回の結果は今後の研究の方向を示すものとなっている.消化吸収や免疫調節等の小腸の機能に関する研究は盛んになっており,小腸粘膜の増殖機構やアポトーシスについても検討がなされているが、その生理的意義について探求した結果は少ない.アポトーシスに関しては、今回の研究で、管腔内に遊離されたアポトーシス細胞が様々な細胞質内酵素をもっており摂取された食物の解毒に重要であること、アポトーシスの発現によりそれ以上の細胞障害を受けないようにするための自己防衛的に作用していること、が判明した.中枢神経系の小腸恒常性維持とアポトーシスの生理的作用への関与観点からの今回の実験系の確立は今後さかんになっていくと予想される
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