研究概要 |
1. 名古屋市立大学病院で外科的切除された臨床胃癌切除標本98例の免疫組織学的検討によりATBF1とRUNX3の細胞内局在を評価した.ATBF1の免疫染色には,今回新たに開発されたrat monoclonal抗ヒトATBF1抗体(R87,MBL)を用いた.2. 胃癌細胞株MKN45細胞を用い,myc-ATBF1とflag-RUNX3の強制発現系で,抗flag抗体で沈降し抗myc抗体でblot,抗myc抗体で沈降し抗flag抗体でblotすることにより,ATBF1とRUNX3の蛋白質相互作用を免疫沈降法で評価した.3. 胃癌細胞株MKN45細胞を用い,ATBF1とRUNX3の強制発現系で,p21^<Waf1/Cip1>promoter vectorにpGL-p21-H2320,internal control vectorにpGL4.74を用いてp21プロモーター活性をDual luciferase assayで評価した.4. TGF-β刺激によりRUNX3が核内移行することが知られている胃癌細胞株SNU16細胞を用い,recombinant TGF-β1(2ng/mL)の刺激に反応して細胞内局在が変化する内因性のATBF1とRUNX3を蛍光免疫染色にて共焦点レーザ顕微鏡(LSM5 conforcal laser scaning microscope Zeiss)で解析した.【結果】1. 臨床胃癌切除標本98例の免疫組織学的検討によりATBF1とRUNX3の核の染色性をそれぞれ0~5の6段階にスコア化し検討したところ,統計学的に有意な相関関係が認められた(RS=0.433,P<0.0001).2. 胃癌細胞株MKN45でATBF1とRUNX3の蛋白質相互作用を免疫沈降法で確認した.3. Dual luciferase assayでは胃癌細胞株MKN45でATBF1とRUNX3はp21プロモーター活性を相加的に増強した.4. 共焦点レーザ顕微鏡での観察では胃癌細胞株SNU16の細胞質に存在するATBF1とRUNX3が,TGF-β1刺激後24時間で,ともに核へ移行した.【結論】TGF-βシグナル伝達系においてATBF1は癌抑制因子RUNX3と複合体を形成して,核移行することによりp21プロモーター活性をup-regulateし,転写因子型癌抑制因子としての機能を発揮すると考えられた.
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