研究概要 |
1.腸内細菌産生ペプチドの細胞内動態を明らかにする 前年度までに,バシラス菌由来腸管保護物質であるcompetence and sporulation factor (CSF)を化学的に合成しFITC標識をした後,大腸癌細胞株Caco2/bbe cellsに添加した結果,このCSFは15分後に細胞質内に取りこまれ,30-60分後にその一部は核内に取り込まれていくことを明らかにした.今年度は,新規乳酸菌SBC88由来の腸管保護活性物質(国際特許申請中)について同様の検討行った.その結果,この活性物質は細胞内には取り込まれず,上皮細胞表面に吸着した.この吸着を仲介する分子を探索した結果,インテグリンの一種であることが判明した.以上から,菌由来の腸管保護活性物質には,細胞内に取り込まれて効果を発揮する場合と,細胞表面に吸着して効果を発揮する場合があると推測された(現在投稿中) 2.MDR-1による細菌産生ペプチドの排出能を明らかにする 今年度は我々が作成したMDR-1低発現Caco2/bbe細胞を用いて,CSFの細胞内蓄積量を調べた.その結果,control細胞と比較してMDR-1低発現細胞ではCSF蓄積量が増加していたが,およそ10%程度の変化であった.すなわち,MDR-1はCSFの細胞外排泄にかかわっているが,他にもCSF排泄メカニズムが存在すると考えられた 3.MDR1の機能異常に起因する細菌産生ペプチドの蓄積と腸炎発症との関連性を明らかにする 我々が作成した変異MDR-1遺伝子ベクターを正常マウス腹腔内に投与し,炎症性腸疾患の発生について検討したが,組織学的にわずかな腸管炎症は認めたマウスが存在したが,明らかな腸炎を発症したものは無かった.MDR-1の遺伝子変異のみでは,腸炎発症を惹起しないことから,他の因子の複合的な異常により,腸炎が発症すると考えられた
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