研究概要 |
本研究は炎症性腸疾患難治性・永続性の要因である疾患フェノタイプを記憶した“腸炎惹起性メモリーT細胞"の維持機構を解明し、疾患記憶を“リセット"する究極の炎症性腸疾患根治療法の開発することを目標とする。本期間において以下の事を明らかにした。1)腸内細菌抗原は腸炎惹起性メモリーT細胞がエフェクター細胞へと分化し、腸炎を発症するためには必須の因子であるが、メモリーT細胞の維持においては必須ではなく、骨髄IL-7は腸内細菌抗原非依存的に腸炎惹起性メモリーT細胞を維持する事を、無菌マウスシステムを用いて証明した。2)腸炎惹起性メモリーT細胞の維持機構における骨髄IL-7の必要十分性を、 IL-7^<-/->, RAG1^<-/->マウスへのIL-7<+/+>, RAG1^<-/->マウス由来骨髄移植を行い、骨髄特異的IL-7発現RAG2^<-/->マウスを作製し、CD4^+CD45RB^<high>T細胞移入腸炎を誘導することにより証明した。3)腸炎惹起性メモリーT細胞の維持機構において、骨髄細胞の中でもさらにIL-7産生性骨髄間葉系幹細胞の存在が重要であることを、骨髄間葉系幹細胞培養系と、フローサイトメトリー、RT-PCR法、蛍光免疫染色法によるIL-7産生細胞の検出法を確立し、IL-7^<-/->, RAG1^<-/->マウスへのIL-7^<+/+>, RAG1^<-/->マウス由来骨髄間葉系幹細胞移植を利用したIL-7^<+/+>MSC-IL-7<-/->, RAG1^<-/->マウスを作製し、CD4^+CD45RB^<high>T細胞移入腸炎を誘導することにより証明した。以上の研究結果から腸炎惹起性メモリーT細胞の維持機構においては、腸内細菌抗原刺激は必須ではなく、骨髄に存在するIL-7産生性間葉系幹細胞が重要な役割を有することが示された。本知見は今後骨髄IL-7をターゲットとした治療法の開発において非常に重要な進歩である。
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