本研究は炎症性腸疾患難治性・永続性の要因である疾患フェノタイプを記憶した"腸炎惹起性メモリーCD4^+T細胞"の維持機構を解明し、疾患記憶を"リセット"する究極の炎症性腸疾患根治療法の開発することを目標とする。 本期間において以下の事を明らかにした。1)骨髄間葉系幹細胞(MSC)を純化培養し、IL-7の発現を検討したところ本細胞が40世代以上の継代培養においてIL-7のmRNAを発現した。また蛍光免疫染色およびフローサイトメトリーによる検討においてIL-7蛋白を発現することを示した。2)IL-7^<+/+> x RAG-1^<-/->マウス骨髄由来MSC(IL-7^<+/+>MSC)とCFSEラベルを行った腸炎惹起性メモリーCD4^+T細胞を供培養したところ、4週間以上にわたりメモリーCD4^+T細胞の分裂、維持が確認された。一方IL-7^<-/-> x RAG-1^<-/->マウス骨髄由来MSC(IL-7^<-/->MSC)とメモリーCD4^+T細胞の供培養群では分裂、維持が見られなかった。3)IL+7^<+/+>MSCあるいはIL-7^<-/->MSCをIL-7^<-/-> x RAG-1^<-/->マウスへ移植し、3週後にCD4^+CD45RB^<high>T細胞を移入したところIL-7^<+/+>MSC移植群のみ慢性大腸炎を発症し、同マウス骨髄においてIL-7産生細胞と接してCD4^+T細胞が維持されていた。 以上の結果から腸炎惹起性メモリーCD4^+T細胞の維持機構においては、骨髄に存在するIL-7産生性間葉系幹細胞が重要な役割を有することが示された。本知見は炎症性腸疾患難治性の要因として、腸管外リザーバー臓器の重要性を明らかにするのみならず、本機構をターゲットとした治療法の可能性を示唆する非常に重要な進歩である。
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